お知らせ

2016.04.25

旅立ちの春

その方の生まれと育ちは長野の温泉旅館。
職員がお手伝いをすると、「お姉ちゃんありがとね~、今度うちに泊まりにきてね。」
ご家族が面会に来られると、「じゃーんけーんほい!」負けず嫌いで勝つまでじゃんけん。
談話室からはいつも明るい笑い声が聞こえてきました。
 

 
そんなふうに元気だったその方が、急に食事を召し上がらなくなったのは、桜のつぼみが固い頃。
 

 
ご家族は驚き、心配される日が続きました。
医師からお別れが近いことが告げられると、ご家族は泊り込みで寄り添われました。
お部屋へお邪魔すると、そのにぎやかなこと!
娘さん、お孫さんの明るい声でいっぱいです。
じゃんけんのこと、クリームパンをペロリと召し上がったこと・・・。
思い出話でいっぱいです。
 

 
翌朝、その方はきれいにお化粧をされ、静かに車に乗り込まれました。
見送る私たちに、「いってきます。」
と娘さんが笑顔でおっしゃっいました。
私ははっとし、「いってらっしゃい。」
とお返事し、旅立ちを見送りました。
桜が咲き始める初春のことでした。

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